マスクレンズが曇る原因と対策について

マスクのレンズがダイビング中に曇ってしまい困ったという事は頻繁に発生する現象のひとつです。
まず、曇るという現象について説明いたします。これはガラス表面に無数の小さな水滴が付着してしまう現象です。一般に、湿度が高い環境で冷たい物を置くと、そこには水滴が付きます。(空気中の水分が凝固します。)微小な水滴がひとつひとつしっかりとした玉状を保っていればそれらが視界を遮るような曇りとなってしまいます。

ここで撥水と親水という現象に注目しましょう。
撥水というのは、水滴が玉状になっていることを表し、親水というのは水滴が玉にならず表面になじんでしまう事を表します。曇りは撥水作用がガラス面上にあることで発生してしまいます。逆に親水作用がある場合は曇りません。
曇り止めと称する液体や処理はこの親水性をガラス表面に持たせることを目的としています。

では撥水作用はなぜ起きるのでしょう。これにはいくつかの原因がありますが、ダイビング用のマスクで一番多いのがフランジのシリコーンゴムから出るシリコーン成分の付着です。シリコーンは強い撥水作用があり、しかも洗剤ではなかなか取れないという頑固な成分です。また、ガラスに大変付着しやすく取れにくい物です。

ダイビングマスクのシリコーンゴムは生き物とまで言われ、その物性が劣化しにくい反面いつまでもシリコーン成分を揮発し続ける特性があります。密閉したケースで長期間保管された場合など、頑固なシリコーン被膜が「コーティング」されてしまい、洗剤で洗ったくらいでは落ちません。また、この被膜の上に曇り止め剤などを縫っても曇り止め剤自体がガラス面上へ均一に伸びず効果が出にくくなります。

このシリコーン被膜を落とすためにはガラス表面を研磨するしかないのですが、この研磨剤は一般に酸化セリウムなどを使用します。自動車ガラス用の油膜取り剤や浴室のガラスクリーナーなどでこの成分が入っている物は効果的にシリコーン被膜を落とすことが可能です。(製品によってはフレームの樹脂などを侵す場合が考えられますのでご注意ください。)

一度しっかりと落としたシリコーン被膜ですが、残念ながらマスクを保管しているうちにまた徐々に形成されてしまいます。
そのような時は、バイオアンチフォグフィルムのご使用をおすすめいたします。